薬物中毒者

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二度寝から目を覚ますと、時刻は午前11時を回ろうとしていた。もう何度目の自主休講だろう、後期に入ってから大学をサボる事が圧倒的に増えてしまった。理由を探せば枚挙に暇がなく、その度自己嫌悪で吐きそうになるので、さしあたっての問題、向こう半日だけを考えることにした。気楽に生きるとは、見たくない現実から目を背けることだと、気楽に生きることが出来ない人特有の思考回路が堂々巡りをしていた。もちろんそれが数多繰り返した詭弁であることはわかっていた、おそらくペシミズムとは麻薬なのだろう、自分では抜け出せない中毒症状のようなものなのだと結論づけそうになっては、また過去の過ちを繰り返しそうになっていることに気付き、既の所で崖から落ちずに済んだことにほっと胸を撫で下ろしていた。

 

 

朝食兼昼食はカップラーメンだった。一人暮らしを始めたらおそらく1ヶ月以内に栄養失調で倒れる自信がある。規定の時間より1分早く蓋を開け、食べた。高校まではほぼ毎日1日3食きちんと食べていたので、幸せな家庭に生まれていたんだろうなと思った。その証拠に、妹がスーパー優等生に育っていた。一体自分はどこで間違えたんだろうと、最近はもう考えることも少なくなったが、まるで現在進行形で間違え続けている事を否定しているようで、それがひどく烏滸がましく、傲慢に感じられたので、やめた。

 

 

家を出て、近所の本屋に出かけた。大学に行かない事は前日から決めていたので、出席カードも預けてあったし、聞いてもしょうがない授業ばかりだった。建前としては好きな小説(ラノベ)の最終巻が出るから(これが建前なのも大分終わっている)大学を休んだ事にしているが、本音を言えば、できる限り往復5時間かけてわざわざ大学に行きたくないだけだった。金を人から借りるのはあまり好きではないが、確実に未来への負債は貯まる一方だった。

本屋で目当ての品を買うと、そのまま隣接しているドトールへと向かった。本を買った時についてきたコーヒーのサイズアップクーポンと、モンブランを注文して、席を探した。結局いつも使っている席に着くと、テスト期間中によく勉強してる席なせいで来年1年間のことがふと頭によぎり、すっかり気が滅入ってしまった。なんとかモンブランをヤケ食いして正気を取り戻した。

 

読み進めるのに、とても時間がかかった。それが、あまり望んでいなかった展開だったからなのか、好きだった作品が終わることが受け入れ難かったからなのか、はたまた別の理由なのかは分からなかったが、ページをめくる度に、スマホを開いたり飲み物を取りに席を立ったりを繰り返していた。昼過ぎに席に着いたはずなのに、半分も読み進める頃には西日もすっかり強くなり、店内には机に向かう多くの学生の姿があった。高校生はもうすぐ期末試験か、などと自分の事を棚に上げつつ、1ページ1ページと読み進めていき、読み終えた時、心地よい虚脱感に包まれていた。

 

 

幸せとは麻薬だと思う。1度経験した快楽じゃ2度目は満足できないし、現状の幸福ではいずれ物足りなくなってしまう。初めて食べた高級で美味しいものも、何度も食べてるとそのうちにその味に慣れてしまい、より高級なものでなくては感動出来なくなってしまう。中学生の頃は好きな音楽を聞くだけで満足できたのに、バイトを始めて金が手に入ると、ライブに行ったりグッズを集めたり、高次の欲が膨らんでいく。初めは一緒に話すだけで満足していた異性も、次第に遊ぶだけでは満足できなくなるし、不安定な関係性に名前をつけたくなる。それが本能として備わっている生き物として生まれて、藻掻くことも叶わず、知らず知らずのうちに薬物中毒者になってゆく。

 

 


amazarashi 『未来になれなかったあの夜に』Music Video

 

 

近況報告

第五人格のdisco窓で知り合った女の子と飲みに行くことになったんですけど

・キャバクラで働いてる

・ホスト通い

パパ活してる

などいろいろヤバエピソードが飛んできて麻薬とか売られたりしないか心配になっています

「パパとご飯行ってくるー」のパパが実父を指していない所が面白ポイント

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